「将来、もしあなたが私立小学校受験を考えるとすれば…」

 これは首都圏、一部の主要都市に限られた事かもしれませんが、教育に対して意識の高いご家庭では、我が子を育てる上でもたくさんの「こだわり」を持つように、教育、とりわけ学校もこだわりたい、という意味で、私立小学校を志望するご両親が増えてきています。みなさんもご存知の通り、数年前から「お受験」「お教室」など、不思議な言葉が定着し、特殊な空気、色合いをその中に感じておられる方もたくさんおいでになることでしょう。
 しかし、もし、あなたが大切な我が子のために、本当の意味で「教育環境としての小学校」にこだわろうとするのであれば、どうぞそういう世の中の不確かなうわさや面白半分の情報に翻弄される事なく、正しい知識と認識を持って、私立小学校受験を念頭においた生活を送っていただきたい、と思います。
 
 本来、私の仕事は、私立小学校受験をするお子様方の受験準備をするためのクラスを行い、また、そういうご家庭のご相談に乗り、より有意義な子育てをしていただくためのカウンセリングをする、という事です。こういう仕事がら、多くのご両親、お子様方にお目にかかりますが、ここ数年、とみに感じる事は、「私立小学校受験」というものを、すっかり誤解なさっている方が多い、という事です。
 さて、みなさんが、将来我が子に私立小学校受験をお考えになるとすれば、まっ先に何をしないといけない!思われるでしょうか?まずは、子供のトレーニング、子供の受験準備のためにと早期教育の教室をお探しになりますか?それとも、能力開発のための教材などを買い揃え、学校の情報収集をしますか?
 確かに、そういう事は決して間違いではないですし、マイナスにはなりません。しかし、ちょっと待ってください!上記のような事をもって「受験に向う事」と思われる事は、じつは大きな間違いだと私は思っています。
 子供の能力開発も、頭の体操的トレーニングも受験にはもちろん必要ですが、本当にもっともっと大事な事は… それは、あなたのご家庭の「家庭生活」「生活をする上での意識」をまずは見直していく事です。

 日本の多くの私立小学校は、戦後まもなく、もしくは日本の社会生活が安定期に入った昭和30年代、40年代に開校されました。中には戦前からの伝統校もたくさんあります。とするならば、当時、それらの学校で教育を受けた卒業生は、今ではすでに45歳以上、中には80歳を迎える方々もおいでになるはずですね。
 どうでしょう?それをあらためて思えば、当時の私立小学校という環境は、果して今の私達がイメージするような小学校と同じだったと思われますか?いいえ、きっと違うでしょうね。そこは、たぶん、本当にほんの一握りの、とても特別とも言えるご家庭の子弟のために開かれた学校であり、環境であったはずです。少なくとも、現代のように、「どんな人でもどうぞ」と、門戸を広く開いて待って下さる学校ではなかったはず… いかがですか?こういう事を、ご理解いただけるでしょうか?
 要するに、その当時の私立小学校というものは、ある意味一般人にとっては、とても「敷居の高い世界」だった事でしょう。しかし、時代はかわり、今ではすっかり、どんな人にも門戸を広げてくださる、間口が広がったのですね。しかし、広がったのは間口であって、中身は???
 時代に呼応したマイナーチェンジはなさってはいても、きっと、学校そのものの教育理念、そういうものから醸し出される空気、雰囲気は、きっと変わってはいないはず…いえもっと言えば、よほど意識的に学校が大変身をしようとしない限りは、長年の教育から生まれる学校の味、根本的に学校が目指すもの、そのものは変わるはずはないのです。とすれば、その学校の生徒として求められる生徒には、時代が変わっても、大きな違いはないはず、ですね。

 学校に限らず、あなたはどこか「敷居の高い」ところに出かけなければばらない時、きっと普段にはない緊張感を持って、いろいろとお考えになられるはずです。たとえば、どんな服を着ていけばいいのか?少なくとも、自分の好みを優先するよりも、まずは自分がしていこうとしている装いが、その場に相応しいものかどうかを第一に考えられるでしょう。どんなものを持っていけば良いか?そして何よりも、「自分という存在」が、果してそこに適応する人間かどうか?という事を真剣にお考えになるはずです。(もちろん、盲へびに怖じず、の諺のように、そういう事を全く考えようともしない方々が親となっている時代です。しかし、正直、そういう方々には、上記のような世界は、やはり無縁の世界と思うべきでしょう)
 そう、こういう緊張感を持って臨むべきもの… それが、私立小学校、でしょう。

 ところが、今のご家庭は、そういう事はおかまいなし。まるで、高校受験や大学受験のように、すべてのものを数値に置換え、「難易度」としてしか学校を見ようとなさいません。もっとひどい場合は、学校そのものを見ようともせず、安易にご自分達の「好み」だけでその学校を云々する… こういううふに分析しながら考えれば、「何を食べたいか?じゃあ、どんな店に行こうか?」のように、子供の学校とは安易に決められるべきものではないのです。

 私がここで何よりも言いたい事、どうしても伝えたい事、それは、「まずは、人、ありき」「まずは、家庭、ありき」という事です。子供の能力を伸ばす事も、訓練をする事も必要です。しかし、こちらは大変とは言うものの、案外、幼い子供達はスポンジのように様々なものを吸収し、成長していきます。
 しかし、その子供も、普段の生活、家庭環境の中から自然に身に着いていくものは、急には変える事は出来ません。そして、ご両親の元、家庭生活から子供が学び、身につけていくものこそ、子供の人間性を形成する上で大きな意味を持つのです。そう、昔から、「親を見れば子供がわかる」というのは、まさにこういうことから、の意味なのですね。

 もしあなたが、将来我が子に私立小学校受験を!とお考えであれば、まずは、ご自分達の家庭生活を見直してください。そして、少し「敷居の高いところ」に行こうとしている自分達を忘れず、普段の生活を営んでください。
 子供は、親が育てたように、家庭環境の中で正直に成長していくのですから!