しっかりと叱っていますか?

 ここ数年、「ほめて、育てる」ブームのようです。
書店の育児コーナーには、たくさんの「ほめ育て」の本が並んでいます。人からほめられること、確かに大人になってもほめられるということはうれしいことですね。それに、多少注意されるべき点がある場合でも、まずはちょっとほめてもらい、その後で注意をされると、気持ちよく聞く気になります。
 
 たとえば、会社や仕事での場合・・
「このレポート、本当に良く書けているよ。大変だっただろうね、ご苦労さん。でも、敢えて言えば、もう少し事例の引用などがあれば、もっと良くなるだろうね。」などと言われると、まずはほめられ、次にねぎらわれていますから、その後に注意されても(むー、そうだなあ、確かに引用があったほうがいいな。よーし、もうひとがんばりしてみようか。)などと思えてしまいます。

 これが主婦の場合・・・
「むー、この料理は美味しいねえ。季節感もあって最高だね。やっぱり家で食うメシはうまい!!今度は、もう少し薄めでもいいかもね。あー、それにしてもウマイよ。」こう言われれば、「そうね、ちょっと味は濃いめだったわね。今度は薄味にしてみるわね。」と、素直に言えるでしょう。

 しかし、子供を育てる場合には、ほめるとういうことは、子供を成長させる「一つの手段」にすぎません。要するに、同じ手段ばかりで「育てる」ことには無理があります。つまり、良いことをしたときにはほめられるべきですが、悪いことをした時には、やはりしっかりと叱られなければならないのです。

 現代は、叱られた経験の無い子供がたくさんいます。そういう子供達を生んだ要因には「家庭内での父権の低下」や「親や先生の友達化」などがあげられるでしょう。ほめるべき時にはしっかりとほめてやり、叱るべき時にはしっかりと叱る、これが正しい親の仕事であり、責任です。
 叱られ慣れていない子供達は、叱られた時には驚き、そういう驚く感情だけが先行するために、なぜ叱られたかを考える余裕もなくて、そこから「学ぶ」事が出来ません。(これが中学生や高校生の場合には、驚かなくなったかわりに「キレる」という状況を招くのです。「何が悪いんだよー、おまえにそんなこと言われたくねーよ」という具合に・・・) 
 
むかし、テレビのCMで「反省ザル」というのが流行ったことがありました。その時のキャッチコピーが、確か「反省だけなら猿でも出来る」というようなものだったと思います。しかし、叱られていない子供は、猿でさえ出来る、と言われた反省すら出来ない、というわけです。

 子供は未熟です。自分でまわりの大人の様子を見て真似たり、発見したりして、毎日どんどんと新しいものを習得しています。しかし、自分自身の力で、物事の善悪を十分に判断する、というところまでは幼い子供にはなかなか出来ません。要するに、様々なことが自分で出来る年齢になっても、その一つ一つのことが「やって良いこと」なのか「やってはいけないこと」なのか、確信をもって十分に判断は出来ないのですね。




 たとえば、ティッシュ。8ヶ月から1歳児くらいのお子様をお持ちのご家庭では、きっと経験がおありだと思いますが、ある日、静かに遊んでいるなあ・・・と思ってふっと見てみると、あらららら、ティッシュの箱からぜーんぶティッシュを出してしまって、とてもうれしそうにご満悦になっている・・・ シュッと引っ張ったら、出てくる・・・またシュッと引っ張ったら、またまた出てくる・・・これを発見した子供は、それはもう「ひゃああああああーっ!!」って気分だったでしょうねえ。この子にとってそれが初めてのことであれば、当然その子には何の罪もありません。
ただ、その子は発見したのです。引っ張れば、出てくる、ということを学習し、学習したことを試してみたのです。ですから、この子にとって、ティッシュの箱から全部ティッシュを出してしまうことは、まだ「悪いこと」という認識はありません。いかがですか?おわかりいただけましたか?
 そして、その様子を見たお母様(お父様)は叱ります。「○○ちゃん、ダメじゃないの!!何てことするの!!」さあ、この叱り方はどうでしょうか?確かに叱っていますね。この時、お母様(お父様)はとても恐い顔をして、大きな声で怒鳴られるかもしれません。『お父さんやお母さんは叱っているのだぞ』ということは十分に子供には伝わりました。しかし、残念ながらこれでは不十分なのです。なぜなら、これでは脅かしている、にすぎません。

 叱る、ということは、『なぜ、それがいけないことなのか?なぜ、その行為や言動が、叱られるに値することなのか?』を十分に伝えなければならないのです。そうです、1歳児には1歳児にわかる言葉で、2歳児には2歳児の理解出来る言葉で、です。
 子供は、叱られている理由がかわって、初めてその行為が「いけないことである」ことを認識するのですね。ついでですが、こういうのもいけません。「そんなことしたら、となりのおばちゃんが怒るよ!!」とか、「ほらごらん、あのおじさん、すごい恐い顔してにらんでるでしょ!!」とか、「そういうことをしたら、お化けが出てきて、あなたを連れていってしまうよ!!」なんてのも、当然いけません。
 このように叱られるべき対象によっては、子供の社会性を養うことにもつながりますし、また家庭内では「躾」と深く関わってもくるのです。

 さあ、もう一度おさらいをしておきましょう。

★ ほめる時は満面の笑顔でほめてやり、叱る時は、しっかりと叱りましょう。
★ 叱る時には、「なぜ叱られることなのか」をはっきりと、子供に理解出来る言葉で伝えましょう。
★ 叱ることは「躾」であると同時に、社会性を養う、親として大切な行為であり、責任です。
★ 親の気分で叱ることはやめましょう。昨日ダメ!と言った行為が、今日は許される・・・というような子供が戸惑うような叱り方は、最もいけない事です。絶対にやめましょう
★ 叱っても叱ってもその行為を繰り返す時には、厳しくたしなめましょう。
★ 「泣く子と地頭には勝てない」という諺がありますが・・・ 叱ったら子供が泣き出した、だからその日だけはその行為を認めてやる・・・やはりこれもいけません。叱られるべき行為は、断固として許してはいけないのです。

 おわかりいただけましたか?
ただ、もう少し子供が大きくなって、近所の子供達と遊ぶ、幼稚園のお友達と遊ぶ・・・というようなことが子供の日常生活の中に入ってくると、少し親にとると厄介な問題が生じてきます。
 それは、「○○と言う行為は、我が家ではいけないこととされているが、A男ちゃんやB子ちゃんのお家では許される」というような場合です。子供は、こういうことはめざとく見つけたり、感じたりします。このようなことは、親になると誰しも経験する頭の痛い問題ですね。
 しかしこういう場合も、一番大切なことは、その行為が「なぜいけないことなのか、どうしてゆるされないのか」をしっかりと親自身がその理由をはっきりとさせ、子供にも改めて伝えることです。
「A男くんのお家では叱られることではないかもしれないけれど、うちでは、お父さんはこういうことは〜だからいけないと思っているのだよ。だからおまえにも、してはいけいことだ、と言っているんだ。」と。
 こんな時、カッとなってよくお母様は叫んでしまいます。「そんなに〜がしたいんなら、B子ちゃんのところの子供になりなさい!!もう、お母さんはそんな子はいりません!!」なんて。
 しかし、私も母親としてそういうカッとする気持ちも重々理解した上で言います。こういう解決(!?)の仕方は、何の意味もありません。ですから、最初は子供にとって理解しづらいことであったとしても、やはり繰り返し繰り返し時間をかけて、それぞれの家庭、それぞれの両親には考え方があって、この家庭の一員としての息子(娘)、私達両親の息子(娘)として、その行為や言動はゆるされないものなのだ、ということを「感覚」としても理解させなければなりません。そして、こういう努力が、家族としてのつながりやその重さ、家族の一員としての認識を理解させることにもつながっていくのです。

 子供を育てること、それはまさに一つの行為がどんどんと様々な方向につながって、それぞれが絡み合い、意味を持つことなのです。「叱ること」もう一度、じっくりと考えてください。

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